Toyo理工学部 生体医工学科

大学院理工学研究科 生体医工学専攻

山内 康司

医療機器とユーザを人間計測技術で評価する

私達は,より有効で安全な外科手術を実現するために,人間計測技術を用いて外科手術の「物」と「人」を定量的に評価する研究を行っています.外科手術は,人間が様々な判断を下しながら医療機器を操作することにより成り立っています.新しい機器や治療方法の有効性・安全性評価においては,ハード・ソフトそのものの臨床的評価に加えて,ユーザが機器をどのように使いこなすかという観点からの評価も重要です.そこで私達は,この「物」と「人」の両方について,運動解析や力覚計測といった人間計測技術により計測し,その有効性・安全性や技能を定量的に評価することを試みています.得られた評価データは,よりよい医療機器の設計に反映できるだけでなく,医学教育システムの充実,さらには医療安全の向上に役立てることが可能です.

device evaluation

 

手術機器操作性評価システム

外科,とりわけ整形外科では,開創・インプラント等の挿入・手術器具の固定など,術者に大きな筋負担を課する操作が少なくない.一般的に我々の発揮できる筋力は姿勢や操作対象物の形状に大きく依存する.しかしながら手術場環境では手術台の高さや操作方向に制限があるため,術者は無理な操作態勢を強いられることが多く,手術手技や器具の改良が求められる.

 我々は経皮的椎弓根スクリュー固定術(PPS)用の新しいスクリューおよび器具の開発を行っており,その一環として,ドライバーの操作力を計測するシステムを開発し,ハンドル形状と術者の操作姿勢が締結トルクに与える影響を評価している.この研究結果を基に,より「使いやすい」機器設計や使用方法を提案していく.

※田中医科器械製作所との共同研究

※脳外科手術デバイスに関して東北大学・東京電機大学等と共同研究

 

ナビゲーション用位置計測反射球の劣化の評価

ナビゲーションシステムに使用される反射球マーカは,メーカは単回使用を指定している.だが,実態調査の結果,マーカを複数回使用している医療機関が少なくなかった .

我々はマーカの複数回使用による劣化を評価する方法を開発し,マーカ認識率や計測誤差の計測を行った.

※産業技術総合研究所との共同研究

 

手術ロボットの機械要素の洗浄容易さの評価

手術ロボットは高価であり,鉗子部などは繰り返し使用されることが多いが,一般的な手術器材と異なりその構造は複雑であり,十分に洗浄できるかどうかが問われる.

そこで,ある程度の複雑さを持つ機械要素がどのくらいの洗浄容易さを持っているかを,残留汚れにて評価した.機械要素のうちピンジョイント機構に注目し,軸の隙間の大きさによる残留汚れを計測・評価した.

※産業技術総合研究所・東大との共同研究

 

内視鏡映像観察時の視線解析

内視鏡下大腸ポリープ切除術の録画ビデオを観察中の,熟練者および一般被験者の視線解析を行った.実際の大腸ポリープ切除術の録画ビデオから,大腸ひだに存在するポリープを発見する過程を2分切り出し,被験者に提示した.その間の両眼の運動を視線検出装置で記録した.被験者はポリープ切除術の経験が豊富な外科医1名,および非医療系の学生8名である.ポリープが現れるシーンのうち,熟練者は86.7%(すなわち8.9秒)ポリープを見ていたのに対して,一般被験者では30.6±18.8%にとどまった.よって大腸内視鏡において,熟練度が視線に影響する可能性が示唆された.

※東京工科大学との共同研究

 

3Dプリンタを用いた手術トレーニング・リハーサル用模型の開発

三次元実体模型は,複雑な立体構造を直感的に理解する上できわめて有効であり,特に整形外科・口腔外科などの領域の一部疾患では手術シミュレーションへの応用が進んでいる.しかし,従来の光造形樹脂を使った模型は造形仮定に時間がかかるほか,装置や模型作成費が高価であるなどの誓約があり,臨床で広く使われるためには改善される課題を有する. 我々は2000年より,Rapid Prototyping法の一つである粉末固着法を用いた三次元実体石膏模型をベースとした,整形外科領域における手術計画・手術シミュレーションおよび手術トレーニングに関する開発を行っている.

※産業技術総合研究所における研究成果・筑波大学との共同研究

内視鏡手術に対する立体映像の効果

体内を三次元的に表示できる立体内視鏡は,奥行き感により従来より迅速・正確に手術ができるとされる反面,術者の疲労が大きく,長時間の観察は困難であると言われていました.私たちは最新の立体内視鏡で実際の手術で行われる操作を被験者に行わせ,通常の二次元の映像と立体映像において操作性や疲労の違いが現れるかどうか検証しました.実験では確かに立体映像によって操作性は向上しましたが,疲労に顕著な差は見られませんでした.

※産業技術総合研究所における研究成果

内視鏡鼻内手術トレーニングシステム

私たちは,実体感に富む人体模型をベースとしながら,内視鏡下手術で必要とされる高度な操作スキルに対応した手術トレーニングシステムを開発しています.

おもな特長は以下のとおりです. (1)実際の鼻内と同等の形状・質感を実現する (2)手術ナビゲーションのトレーニングを考慮し,X線CT撮影に対応する (3)操作スキルを定量化し評価するためのセンサを有する

※産業技術総合研究所における研究成果